安曇野市豊科南穂高細萱の147号沿いにある地域の偉人の記念館。
前に147号を通ってて案内板を見かけて気になってはいたものの、時間が早いのと、建物も普通の家だったので通過してた。
で、今日は昼過ぎで丁度いいし、ここまで特にどこも寄らずに来てたから丁度いいなと寄ってみた。
けどこれ、道が空いてたからゆーっくり進んで道脇の駐車場にパッと入れたけど、前後に車がいて流れてたらまた通過しちゃってたかもね。
さて、JAF割で300円の入館料払って蔵を改装した記念館に入館。
お時間よろしければと館の人に案内ガイドまでしてもらえた。
この入り口前の館の前に飛行帽の胸像と館内に背広の胸像があったんだけど、この館の人がそっくりだったので「子孫の方だな」と一目でわかった。
実は興味は持っておきながらも何の予備知識もなく来てて、戦時中のエースパイロットとかかな?なんて思ってたんだけど違った。
この胸像の「飯沼正明」という人は
昭和初期の戦前の日本で東京からロンドンの間を四日で飛び渡り世界記録を樹立して全世界からたたえられた英雄だそうだ。へー知らなかった。
昭和12年という泥沼の日中戦争が始まる寸前という時期に英国王室戴冠式奉祝で計画され、朝日新聞社の購入した量産プロトタイプの純国産機「神風号」(命名は公募だそうだ)で飛行。当時はパリから東京までの100時間内の横断飛行にかけられた懸賞金も失敗が続出で危険だからと中止にされるほどの冒険だったのを、逆風で難しい逆方向からのアプローチで94時間という奇跡のような記録で横断したという輝かしい栄光。
その偉業を偏見なく褒め称え欧州各国で国賓扱いで迎えられたというのも凄い事。飛行場に駆け付ける観衆の写真がまた凄いし、爽やかな笑顔の飯沼飛行士が実にカッコいい。
そしてそれもさることながら凄いなと思ったのは、到着して翌日にはパーティーや式典に正装で参加というタフさ。二日後にはロンドン上空を記念飛行。そして欧州各国を訪問。ベルギー、ドイツ、イタリア、フランス。数年後には戦争で敵味方になる国々関係なく歓迎され王族や法王などに謁見。
一月後に日本に帰った時の群衆の歓迎ぶりも物凄い。こんな平和で誉れ高い興奮があったなんて全然知らなかった。
自分の両親の生まれた戦前の日本にはこんな輝かしいニュースもあったんだという事実に驚いた。オリンピックも中止になって軍国に突き進むだけの暗い日本という印象しかなかった。。
そして一つ一つ丁寧な案内で細かく説明していただけたのもありがたかった。
蔵の展示を一階二階と見て、次は生家の屋敷の方へも入れた。
中は民家のままなの間取りと造りだけどこちらも記念館で展示があって、飯沼飛行士の人となり交友や仕事ぶりなどの展示だった。
この館の案内してくれた人は飯沼飛行士の兄のお孫さんだそうで、恐慌で没落して借財がかさみこの家まで抵当に入れた借金を返すために、家業を守る兄に代わって弟は報酬のいい新聞社の専属飛行士になり、大記録などの報奨金を含む大金でみるみるうちに完済してくれた大恩人だというこだ。
そんな飯沼飛行士は昭和16年の太平洋戦争で陸軍の物資輸送機操縦士の任につかされ、開戦早々のサイゴンかプノンペンかで事故死。
世界を知ってて平和を愛する英雄であるが為の、現地軍人のやっかみによる殺人だと思う。(個人的な意見)
そしてあちこちで目にした模型はどれも世界最短記録の「神風」、生家側にも飾られていた。
これは後に若干の改装をして「九七式司令部偵察機」として陸軍に採用された三菱製の機体だそうで(海軍でも「九八式陸上偵察機」として採用された稀有な期待)「神風」はプロトタイプの二機目だそうだ。
案内では三菱の技師の話まで細かく解説してくれて興味深かった。
午後のいい時間に寄れてよかった。
訪問者が自分だけだったのでじっくり話も聞けた。
まさか明治の屋敷に上がれるとは思ってなかったし、こんな知らなかった栄光の偉人の話を深く聞けて嬉しかった。
こういう輝かしい出来事は知らずに、軍国だけの昭和初期は嫌な時代だとしか思えてなかったことが恥ずかしい。
そして「神風」という言葉に対する印象が、神に守られた国と称した選民意識の洗脳文句のように思えていたことも恥ずかしい。機名の公募で名を考えた人々はきっと神の追い風に乗って素晴らしい飛行記録に成りますようにという明るい希望を込めていたに違いない。
今現在の嬉しい事や素晴らしく思える出来事が、暗いニュースの陰に隠れて後世に伝えられなかったとしたら悲しいよね、寂しいよね。今年なんかとくにコロナ一色の一年だったけど、それでも楽しいこともあったし嬉しいこともあったと記憶して大事にしたいと思えた。
昨日の美術館や博物館と此処でそれぞれ全然違うカテゴリーだけど、それぞれ感激で沁みて、文化の日らしい勉強になる遠出になったと思えた。
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